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'''ファビピラビル'''(コードネーム:[[T-705]]、商品名:[[アビガン]])とは、[[富士フイルムグループ]]の[[富山化学工業]]が開発した[[インフルエンザ]]の[[治療薬]]の[[一般名]]である。
'''ファビピラビル'''(開発コード:[[T-705]]、英語:favipiravir、商品名:[[アビガン]])とは、[[富士フイルムグループ]]の[[富山化学工業]]が開発した[[インフルエンザ]]の[[治療薬]]の[[一般名]]である。


==概要==
==概要==
ファビピラビルは[[インフルエンザ]]の[[治療]]を目的とした[[RNAポリメラーゼ阻害薬]]である。
ファビピラビルは[[インフルエンザ]]の[[治療]]を目的としたRNAポリメラーゼ阻害薬である。


===インフルエンザ===
ファビピラビルは[[ウイルス]]の[[RNAポリメラーゼ]]を阻害するという、既存のインフルエンザ治療薬にはない新規の薬理作用を持つ。[[オセルタミビル]][[商品名]][[タミフル]])や[[ザナミビル]]([[商品名]]:[[リレンザ]])などは「[[ノイラミニダーゼ阻害薬]]」に分類され、ウイルスが感染細胞から放出されるのを防ぐ作用を持つ。一方、ファビピラビルはウイルスの増殖を直接に阻害する作用がある。このため、比較的遅い[[投与]]でも効果が期待できる。ファビピラビルは、[[オセルタミビル]]([[商品名]]:[[タミフル]])に耐性を持つウイルスや、[[H5N1亜型]]などの[[鳥インフルエンザA]]に対しても有効とされる。
ファビピラビルは[[インフルエンザ]]の[[治療]][[目的]]とした[[経口摂取]]する[[錠剤]]であり、[[インフルエンザワクチン]]よりも遙かに製造も接種も簡単であると期待されている。


また、ファビピラビルは[[RNAポリメラーゼ]]を阻害するというメカニズムであるため、未知の[[新型インフルエンザウイルス]]が登場しても効果があるのではないかと期待されている。
ファビピラビルは[[富士フイルム]]傘下の[[富山化学工業]]の[[古田要介]]氏によって1998年に発見された。2012年にはアメリカ国防総省(通称ペンタゴン)がファビピラビルのさらなる開発を後押しするため1億3850万ドル(現在のレートで約142億円)を[[富士フイルム]]の米国での提携相手である[[メディベクター]]に助成した。[[富士フイルム]]は同薬の権利を保持している。
<ref>[http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N9X6ZO6S972F01.html 富士フイルムのインフル治験薬、エボラ出血熱治療に有望か  - Bloomberg]</ref>


2014年3月に世界に先駆け日本で承認された。
==薬事承認==
2014年3月24日にファビピラビルを有効成分とする「[[アビガン錠]]」が[[厚生労働省]]から世界に先駆け日本で製造・販売を承認された。


===エボラ出血熱===
ただし、ファビピラビルは強い[[副作用]]の疑いがあるため、[[インフルエンザワクチン]]などに代わるものではなく、あくまで[[新型インフルエンザ]]が既存の薬に対する耐性を持ち、効かなかった場合の緊急対策として承認されたものであり、[[厚労省]]が要請を出した場合のみの供給となる。
また、ファビピラビルは[[エボラ出血熱]]にも効果がある可能性が高いとして、世界中が注目している。米国の研究機関などの[[研究]]から、[[マウス]]を使った実験で[[エボラウイルス]]を排除する効果が確認されている。


ファビピラビルは日本で[[インフルエンザ]]向けに承認されたばかりであり、他国や他用途での[[臨床試験]]や承認には最低でも数年はかかるが、2014年の[[エボラ出血熱]]の[[アウトブレイク]]を機に米国政府機関が手続きを迅速化させる動きもある。
また、[[エボラ出血熱]]にも[[マウス]]を使った[[動物実験]]で効能がある可能性が示唆されており、2014年8月15日には田村憲久[[厚生労働大臣]]が閣議後の記者会見で「今般の緊急事態とすれば、[[医師の裁量]]というか[[処方]]によって使うのは[[薬事法]]違反とは認識していない」と述べ、[[パンデミック]]に備え事実上の承認を出している。
<ref>http://www.cabrain.net/news/article/newsId/43541.html</ref>
 
ファビピラビルには未知な部分も多く、さらなる有効性を確認するための[[治験]]を実施することを条件にした。
 
==副作用==
ファビピラビルは既知の[[副作用]]として動物実験での胎児の催奇形性があるため、日本国内では通常の[[インフルエンザ]]には使用してはならないとされ、[[重篤]]な[[患者]]にのみ本人および家族に危険性の説明のうえで使用するものとされている。
あくまで[[パンデミック]]に備えた危機管理用の薬剤である。
 
[[非臨床試験]]の[[動物実験]]で[[催奇形性]]が確認されており、[[ヒト]]でも同様と考えられるため、[[妊婦]]への[[投与]]は避けなければならない。
 
また、[[男性]]の[[精液]]から[[女性]]へ移行することから、男性の[[患者]]に[[投与]]する際は、危険性について説明した上で、投与期間中および投与終了後7日間まで、[[性交渉]]を行う場合は女性が[[精液]]を[[接種]]しないよう[[コンドーム]]による[[避妊]]を徹底するよう警告が付けられている。
 
==インフルエンザ==
ファビピラビルは[[インフルエンザ]]の[[治療]]を目的とした[[経口摂取]]する[[錠剤]]であり、[[インフルエンザワクチン]]よりも遙かに製造も接種も簡単であると期待されている。
また、ファビピラビルは[[RNAポリメラーゼ]]を阻害するという[[メカニズム]]であるため、未知の[[新型インフルエンザウイルス]]が登場しても効果があるのではないかと期待されている。
 
==エボラ出血熱==
ファビピラビルは[[エボラ出血熱]]にも効果がある可能性が高いとして世界中が注目している。すでに米国の研究機関などによる[[研究]]で[[マウス]]を使った[[動物実験]]により[[エボラウイルス]]を排除する効果が確認されている。
 
ファビピラビルは日本で[[インフルエンザ]]向けに承認されたばかりである。他国や他用途での[[臨床試験]]や承認には最低でも数年はかかるが、2014年の[[エボラ出血熱]]の[[アウトブレイク]]を機に米国政府機関が手続きを迅速化させる動きもある。


ちなみに2014年8月時点で[[エボラ出血熱]]の[[治療薬]]として期待されちるものは以下の5つである。
ちなみに2014年8月時点で[[エボラ出血熱]]の[[治療薬]]として期待されちるものは以下の5つである。
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*[[BCX4430]]
*[[BCX4430]]
*:2014年8月現在、[[前臨床]]中。
*:2014年8月現在、[[前臨床]]中。
*[[MB-003]]
*[[MB-003]]([[ZMapp]])
*:2014年8月現在、[[フェーズ1]]準備中。
*:2014年8月現在、[[フェーズ1]]準備中。
*[[AVI-7537]]
*[[AVI-7537]]

2014年8月25日 (月) 15:30時点における最新版

ファビピラビル(開発コード:T-705、英語:favipiravir、商品名:アビガン)とは、富士フイルムグループ富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬一般名である。

概要[編集 | ソースを編集]

ファビピラビルはインフルエンザ治療を目的としたRNAポリメラーゼ阻害薬である。

ファビピラビルはウイルスRNAポリメラーゼを阻害するという、既存のインフルエンザ治療薬にはない新規の薬理作用を持つ。オセルタミビル商品名タミフル)やザナミビル商品名リレンザ)などは「ノイラミニダーゼ阻害薬」に分類され、ウイルスが感染細胞から放出されるのを防ぐ作用を持つ。一方、ファビピラビルはウイルスの増殖を直接に阻害する作用がある。このため、比較的遅い投与でも効果が期待できる。ファビピラビルは、オセルタミビル商品名タミフル)に耐性を持つウイルスや、H5N1亜型などの鳥インフルエンザAに対しても有効とされる。

ファビピラビルは富士フイルム傘下の富山化学工業古田要介氏によって1998年に発見された。2012年にはアメリカ国防総省(通称ペンタゴン)がファビピラビルのさらなる開発を後押しするため1億3850万ドル(現在のレートで約142億円)を富士フイルムの米国での提携相手であるメディベクターに助成した。富士フイルムは同薬の権利を保持している。 [1]

薬事承認[編集 | ソースを編集]

2014年3月24日にファビピラビルを有効成分とする「アビガン錠」が厚生労働省から世界に先駆け日本で製造・販売を承認された。

ただし、ファビピラビルは強い副作用の疑いがあるため、インフルエンザワクチンなどに代わるものではなく、あくまで新型インフルエンザが既存の薬に対する耐性を持ち、効かなかった場合の緊急対策として承認されたものであり、厚労省が要請を出した場合のみの供給となる。

また、エボラ出血熱にもマウスを使った動物実験で効能がある可能性が示唆されており、2014年8月15日には田村憲久厚生労働大臣が閣議後の記者会見で「今般の緊急事態とすれば、医師の裁量というか処方によって使うのは薬事法違反とは認識していない」と述べ、パンデミックに備え事実上の承認を出している。 [2]

ファビピラビルには未知な部分も多く、さらなる有効性を確認するための治験を実施することを条件にした。

副作用[編集 | ソースを編集]

ファビピラビルは既知の副作用として動物実験での胎児の催奇形性があるため、日本国内では通常のインフルエンザには使用してはならないとされ、重篤患者にのみ本人および家族に危険性の説明のうえで使用するものとされている。 あくまでパンデミックに備えた危機管理用の薬剤である。

非臨床試験動物実験催奇形性が確認されており、ヒトでも同様と考えられるため、妊婦への投与は避けなければならない。

また、男性精液から女性へ移行することから、男性の患者投与する際は、危険性について説明した上で、投与期間中および投与終了後7日間まで、性交渉を行う場合は女性が精液接種しないようコンドームによる避妊を徹底するよう警告が付けられている。

インフルエンザ[編集 | ソースを編集]

ファビピラビルはインフルエンザ治療を目的とした経口摂取する錠剤であり、インフルエンザワクチンよりも遙かに製造も接種も簡単であると期待されている。 また、ファビピラビルはRNAポリメラーゼを阻害するというメカニズムであるため、未知の新型インフルエンザウイルスが登場しても効果があるのではないかと期待されている。

エボラ出血熱[編集 | ソースを編集]

ファビピラビルはエボラ出血熱にも効果がある可能性が高いとして世界中が注目している。すでに米国の研究機関などによる研究マウスを使った動物実験によりエボラウイルスを排除する効果が確認されている。

ファビピラビルは日本でインフルエンザ向けに承認されたばかりである。他国や他用途での臨床試験や承認には最低でも数年はかかるが、2014年のエボラ出血熱アウトブレイクを機に米国政府機関が手続きを迅速化させる動きもある。

ちなみに2014年8月時点でエボラ出血熱治療薬として期待されちるものは以下の5つである。

構造式[編集 | ソースを編集]

作用機序[編集 | ソースを編集]

関連項目[編集 | ソースを編集]

参考文献[編集 | ソースを編集]