OsiriX

提供:メディカルウェア
2011年7月10日 (日) 19:02時点におけるimported>PACSによる版 (→‎その他のバージョン)
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OsiriX
OsiriX.png
最新版 3.9.2 (英語版)、3.9.2 (多言語版)(2011年6月7日 (英語版)、2011年6月7日 (多言語版))
対応OS MacOSX、iOS(iPhone/iPad)
ライセンス GPL
公式サイト http://www.osirix-viewer.com
  

OsiriX (オザイリクス)は、DICOM 画像を参照および再構築することに特化したオープンソースの下で開発が行われているMacOSXおよびiOS(iPhone/iPadのOS)で動作する画像処理ソフトウェアである。

Macintosh向けのOsirisというDICOMビューア(というかACR-NEMA時代)がMac OS Xに対応した際に、OsiriXへと名称変更となったものであり、Osiris時代から数えると医療系のソフトウェアの中でも飛び抜けて歴史のあるソフトウェアである。

英語版および、日本語、オランダ語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、中国語をサポートした多言語版がある。基本的に英語版が先行リリースされる。

OsiriXは医用画像で一般的な2Dをはじめ、3次元MPRボリュームレンダリングサーフェイスレンダリングを用いた3Dや4D(時間軸を有する3D、心臓がバクバクしてる動画など)、さらには5D(時間軸および機能軸を有する3D、前述の4DにPET画像のフュージョンなど)までサポートしており、一般的な読影向けのDICOMビューアというよりは、画像の再構成を主目的としたDICOMワークステーションと言った方が的確である。

近年のOsiriXにはDICOMビューアーとしての機能のみならず、簡易なDICOMサーバーとしての機能も備わっている。

内部的には他のオープンソースプロジェクトの成果を次々と取り入れており、たとえばDICOM関連の基本機能にはDCMTK、セキュアな通信にはOpenSSL、可視化にはVTK、セグメンテーションやレジストレーションにはITKなどを積極的に利用している。

2004年12月に開催された世界最大の放射線医学学会である北米放射線学会(RSNA)において、医学の発展に絶大な貢献をしたとしてソフトウェアでは初となるCum Laude賞を受賞した。

OsiriXの開発体制

開発はOsiriX財団のOsiriXプロジェクトにより行われている。OsiriXはオープンソースであり、だれでもソースコードを閲覧することは出来るが、オリジナルのソースコードの編集は限られた者のみ行える。これは無差別な編集による混乱を避けるための予防措置である。改良を行う権限は、貢献の大きい個人、および公式パートナーと呼ばれるセカンドパーティー企業に与えており、第三者によるソースコードの提供についてはセカンドパーティー企業が窓口となり監査をおこなった上で取り込まれる。セカンドパーティー企業は世界各地に点在し、日本地区では 有限会社ニュートン・グラフィックスが窓口となっている。

OsiriXの種類

OsiriXには代表的なオープンソース版始め、iPhone/iPad版や、FDA認証をクリアしたプロプライエタリなものなど、様々なバージョンが存在する。

OsiriX (32bit)

一般的にOsiriXと言えば32bitバージョンのこと。

MacOSX専用アプリケーションで、オープンソースかつ完全なフリーソフトとして提供されている。 普通、この手のフリーソフトとして提供されるものは機能限定の体験的な位置づけで全然使い物にならないことが多いが、OsiriXは後述する64bitバージョンなどと比べても基本的な機能に違いはなく、ほぼフル機能が使える。

ただし、32bitアプリケーションのメモリ上限である4GB(実際にはシステムの都合でその70~80%、約3.5GBが上限)であるため、Cardiac CTやCardiac CTAをはじめとしたボリュームレンダリング4Dなどは機能的には搭載されているので一応動くが、データが大きいと動かないこともある(ほぼ動かない)。そもそも320列CTを買えるお金があるなら後述する64bitバージョンを買え。

OsiriX (64bit)

OsiriX 64bitバージョンは、OsiriX 32bitバージョンにパッチの形で提供されている商用バージョン。 32bitバージョンをダウンロードおよびインストールした後、別途販売されている64bit化パッチを当てることになる。 当然MacOSXでしか動かない。

こちらはソースコードの一部は公開されているが、64bit化にあたりMacOSX標準では32bitのままな部分を商用ライブラリで補っている関係上、その部分は非公開となっている。

32bitバージョンでは厳しかったメモリ制限がなくなった関係で、スライス数が数千枚にもおよぶCardiac CTのボリュームレンダリング4Dなどもサクサクである。また64bit化の恩恵で、メモリ帯域および64bit化されたCPUレジスタをフル活用できるため、32bit版で問題なかった機能も、より高速に動作する。とくにメモリとCPU間のデータ転送が非常に高速になる関係でボリュームレンダリングでは顕著に差がでる。

64bitバージョンの収益で公式サイトのサーバー代などを賄っており、価格的にも1本数万円程度と他の商用DICOMビューアと比べても0の数が2つ3つ違うという破格なものであり、どちらかというと寄付金的な意味合いが強い。

OsiriX MD

OsiriX MDはOsiriX 64bitバージョンをベースに米国FDA認証(日本で言う薬事認証)を取得し医療機器として認められたバージョン。 FDA認証を受けている関係上、バージョンアップには万全を期さなければならず、若干の遅れを伴う。 分厚い英語マニュアルが付属する。

64bitバージョンがベースであるため当然商用。 FDA認証を取るのもタダではないというのもあると思う。 思うだけだが。

なおOsiriX MDはPixmeo社の商用製品であり、本来であれば後述する「その他のバージョン」に分類されるセカンドパーティー企業製であるが、Pixmeo社はOsiriX財団のトップが経営する会社であるため、特別枠で公式パッケージ扱いとなっている。

OsiriX Mobile

元祖iPhoneの商用バージョン。 OsiriX MobileはiPhoneのみ対応しており、iPadでは一応動くけどiPhoneアプリ扱いで画面が4倍拡大表示であるため汚い。 現在は廃止され購入できない。

OsiriX HD

OsiriX HDはOsiriX Mobileの後続となるiPhoneに加えiPadにも完全対応したバージョン。 むしろiPad向けにガチガチに最適化されている。

基本的に2Dのみでボリュームレンダリング等には対応していない。 前述の各種Mac版OsiriXでプリレンダリングした画像を閲覧することはできる。

OsiriX Mobileではデータ転送方法がDICOM通信のみであったが、USBケーブルでiPhone/iPadとPCを繋いでデータ転送できるようになった。 DICOM通信によるデータ転送は、iPhone/iPadからQ/R(クエリ&リトリーブ)する方法と、iPhone/iPadを一時的なDICOMサーバーに見立ててDICOMデータをストア(C-STORE)し送り込む2パターンの方法がある。個人的には操作性の関係で、Macを1台買って、OsiriX32bit版あたりを入れ、そこから2番目のストアする方法で送り込むのが手軽でよいと思う。それでも面倒だというのであれば、ちょっとお金をかけて、既に導入しているPACS、DICOMサーバーの提供メーカーあたりにオリジナルで自動転送ソフトを作ってもらうのも手かもしれない。

ソースコードはAppStoreがオープンソースを禁止している関係上、非公開となっている。

Osiris

OsirisはOsiriXと名前を変える前、1990年代前半に登場した、とてつもなく古いバージョン。 旧Macintosh(日本でいう漢字Talk)に加え、Windows版も提供されていた。

フリーソフトであるが、この当時はまだオープンソースではなかった。

当時としては珍しかったMPRなどにも対応しており、数あるDICOMビューアの中でも微妙に高性能であった。

もう完全に歴史的遺産だが、今なおダウンロード可能であるからビックリ。

その他のバージョン

OsiriX財団を構成するセカンドパーティー企業が特定の医療機関向けに特注開発しているバージョンが存在する。

理想のシステムを作ってもらえるというお金のある医療機関向けの夢のようなサービス。 値段は要望量に比例する。 特注なので当然プライスレス。 なおセカンドパーティー企業が独自に受注しても、その売上の一定割合を財団に納めることになっているらしい。 俗に言う上納金。

OsiriXをベースにRISオーダーリングシステム、レポーティングシステムなどと一体化し、フルPACS化したものなどが確認されているが、基本的に自動車で言えば一応市販車をベースにしているという事になっているGTカーばりに原形を留めていない一品物なので、あまり見かけることはないし、見かけても原型を留めていないものは「これOsiriXカスタム版だよ」と言われないとOsiriXであると気づかないこともあるという。

個人的に知っているのは孝仁会グループ(社会医療法人)に導入されている例くらい。 他にもあるらしいが知らない。 知っている人は書いて。

OsiriXの使い方

基本的な使い方についてはOsiriX オンライン解説文書が詳しい。応用的な使い方についてはOsiriXナビゲーターが詳しい。


応用例

OsiriXは基本的にスタンドアローンなシステムであり、読影医が何十人もいるような大学病院などの大規模な放射線科向けPACS(読影端末)としての機能は弱い。その一方で、外科領域などではOsirXもしくはOsiriXを組み込んだ手術ナビゲーションシステムなどの導入・開発(改造)事例が論文として数多く報告されている。

以下、Google先生で検索して拾ってきた応用例。こんなのもあるよというのは書いてね。

Mixed Augmented Reality Surgery by OsiriX: Image Overlaid See-through Surgery

<youtube size="medium" align="right">PRHQFiymQKs</youtube> この動画は開腹手術・内視鏡下手術の正確性・安全性・低侵襲性向上を目的に、OsiriXをベースとしたイメージ・オーバーレイによる立体的手術支援システムである。

事前に撮影したMDCTによる臓器血管ボリュームデータを、術中にOsiriXを用いてレンダリングしたVR画像(Virtual Reality,仮想現実)を、高輝度プロジェクターを用いて術野(患者の人体)へ重畳表示(AR,Augmented Reality,拡張現実)することで、MR投影(VR + AR = Mixed Reality,混合現実)を実現している。この立体的手術支援画像はワイヤレスコントローラーを術者自身が操作することで的確に術野変化へ位置などを補正できるという。

皮膚から臓器までをリアルタイムにボリュームレンダリングで表示できるOsiriXの導入により、レジストレーション(異種座標系の位置合わせ)には体表ランドマーキング(身体の特徴点)を用いてマーカーレス化し、かつ術者自身によるワイヤレス操作によって直感的なナビゲーションを実現、解剖認識が高まったという。ボリュームレンダリング画像と人体の整合後の重畳表示投影は、誤差わずか10mm範囲内であり、鏡視下手術における手指視覚協同を改善、皮膚切開を最小限にし、的確な切開範囲と切開位置が得られ、低侵襲性を著しく向上したという。


プラグイン

OsiriXではプラグインを用いて機能を拡張することができる。 ようするにMozilla FirefoxやGoogle Chromeで流行の拡張機能(エクステンション)と同じような感じ。

Hip Arthroplasty Templating Plugin

Hip Arthroplasty Templating Pluginは、人工股関節置換術の術前計画を行えるプラグイン。

ベースとなる人工股関節インプラントの選択し、そのテンプレート画像(ベクトル画像/CADデータ)をOsiriX上のDICOM画像(ラスタ画像)に重ね合わせ、位置調整などをシミュレーションするというもの。

なお、このプラグインは基本的にすべて手動操作であり、商用のOrthoViewなどのように、距離や角度の計測データからデータベースを検索し、半自動で世界中のインプラント製品の中から最適なインプラント(テンプレート)製品候補を選び出してくれるというような機能はない。しかしながら、システム構築導入にかかる費用と、インプラントの納入業者が決まっており製品数も限られてるような医療機関・施設において、実際にそこまでの機能が必要かというトレードオフで考えれば、整形外科にとっては既存PACSとは別の専用端末としてでもOsiriXと本プラグインを搭載したシステムの導入を検討する価値があると言える。

なお、本プラグインはインストールが若干難解で、環境によっては動かないことがある。 OsiriX公式サイトからダウンロードしてきたものをインストールしても動かない場合は以下を参照するとよい。

開発

OsiriXプラグインの開発を始めるには、XCode向けのベースプロジェクトを生成してくれるウィザード形式のプラグインデベロッパーキットを使うと良い。もしくはOsiriX公式サイトで配布しているプラグインのソースコードをダウンロードしてきて、それをベースプロジェクトにすると良い。

詳細は誰か書いてください。

脚注


参考文献

  • 杉本真樹 『消化管・肝胆膵ベッドサイドイメージング―フリーソフトウェアOsiriXでつくる3Dナビゲーション』 へるす出版、2009年。ISBN 978-4892696886。   http://www.herusu-shuppan.co.jp/book/650_699/688.html
  • 「フロントランナー IT駆使して医療を可視化」『朝日新聞』2010年7月10日付朝刊土曜版be 、第1・3面。

外部リンク