PACS
PACS (Picture Archiving and Communication System)とは、医療の場で使われる、CRやCT、MRIなどのデジタルな医用画像データを保管、管理し、オンライン・ネットワーク上でやりとりする医用画像システム一式のことである。
一般的にPACSという場合には、医用画像サーバーおよびビューアだけではなく、レポーティング・システムや放射線科情報システム(RIS)などを含むシステム一式を指すのが一般的であるが、狭義にはDICOMサーバーとDICOMビューアーのセットを指すこともある。
概要
医用画像システム一式というと、DICOMサーバーとDICOMビューアーのセットを想像されるかもしれないが、「PACS」という定義においては必ずしもDICOM準拠製品である必要ななく、独自規格の医用画像システムも含まれる。
近年は利便性と通信効率を優先しDICOM規格に準拠しないPACS製品も増えてきている。たとえばモダリティ機器からの画像データ受信などの他社製品との通信にはDICOM通信を用いるが、自社DICOMビューアへの配信には独自通信規格・独自画像フォーマットを用いるというPACS製品も少なくない。この傾向は特にシビアな応答性能が要求される大規模なPACSほど強い。
なお、稀に「うちのPACSも独自規格使っており高性能です!なお付属のDICOMサーバーはDICOM通信の受信しかできません(C-STORE SCPしかサポートしません)」というゴミカスウンコなシステムもあるが、これは前述の性能云々ではなく、単純に技術力がないだけなので、華麗に避けるのが賢明である。つまり、独自規格が許されるのは、DICOM規格を一通りサポートしている前提のPACS製品のみである。
利点と欠点
本格的に読影を行うという意味では、高精細モニターが写真フィルムに比べ、画質が大幅に劣ることから敬遠される傾向があった。たとえばレントゲン写真をみるためのシャウカステンは輝度3000~15000カンデラ、写真フィルム自体のコントラストは20000諧調くらいある。現在最高スペックの高精細モニターなどをもってしても一桁性能が違う。
ただDICOM画像は、ウィンドウレベル変換などの写真フィルムとは異なる見方ができ、解析や再構成も容易、可搬性や保管性なども圧倒的に優れているなどの写真フィルムにはない利点も多々ある。
医用画像がデジタル化したことで、複数の断層画像を繋げあわせて別の画像を作り出す(再構成)や解析なども飛躍的に簡単に出来るようになった。再構成手法は色々あるがMPR法(Multi Planer Reconstruction、他断面再構成法)やMIP法(Maximum Intensity Projection、最大値投影法)、ボリュームレンダリングなどが有名。
加えてネットワーク越しに画像データを即座に送受信でき、また1つの画像を同時に参照することも可能であるため、業務のパイプライン化が進み、より早く的確な診療が可能となる。最近では読影端末のみならず、iPhoneやiPadをはじめ、Android、Windows Phone 7などのスマートフォンやタブレットなどでも参照できるシステムなども登場してきている。
また、電子カルテやオーダリングシステムなどとの連携連動により、検査時の患者情報の入力ミスによるヒューマンエラー、患者取違えなどの医療ミスを抑える効果があるといわれている。ただし、システム統合・システム間連携をおこなうアプリケーションなどは一品物の特注開発となるため、導入コストや運用コストは爆発的に増大する傾向がある。この点に関してはDICOM規格団体などが電子カルテ業界などに標準化を呼び掛けて会合などを開いているが一向に進んでいない模様。
導入状況
PACSは、厚生労働省によるPACS導入補助(画像診断管理加算などの保険点数)が実施されたことで爆発的に普及した。
PACS導入によるフィルムレス化を実現することで、一時的に莫大な導入コストが掛るものの、保険点数は一気に増え(収入が増え)、写真フィルムのときに問題となっていた薬事法の規定でフィルム捨てられないことによる保管費用(倉庫費用)や現像液の廃棄料(産業廃棄物指定されているので高い)などが掛らなくなる(支出が減る)。
短期的な出費は増えるが長期的には儲かるということで、多くの大学・医大、病院が導入し、大規模施設ではほぼ100%近いフィルムレス化を実現している。
一方で診療所などの小規模な施設では未だに写真フィルムが全盛である。そもそも診療所にはPACSメーカーの営業すら来ないという。これは小規模PACSの利益率の問題で、5年間保守するという前提では消耗品である写真フィルムに比べ、PACSは導入コスト(初期費用)が高いため売りにくく、しかも長期運用を想定した場合の全体の売上は少ない(利益率が悪い)。これらの理由により診療所向けの小規模PACSでは長期的なメンテナンスを含めた場合にハードウェア保険料や人件費どころか交通費すら捻出できないのが原因だと言われている。
相互接続
電子カルテやレセコンなどとの相互接続方法の標準化も検討されているが、DICOM関連団体が必死に活動しても、電子カルテ業界は腰が重いらしく、とくに動きはない。
保障期間
日本によけるモダリティ機器やPACS、[DICOM]]関連製品の保証期間は一般的に5年。薬事法での耐用年数が最大5年なので5年。パソコンはせいぜい1~2年保証なので、5年以内に3回程度壊れる前提で見積もり出させることが重要。
大きい病院の場合、トラブルは担当者の責任(進退に関わる)になるので、擦り付ける業者が必要。業者も擦り付けられる前提の価格を提示するのが普通である。この世界では価格が安ければ良いというものでもなく、むしろ価格が高い方が喜ばれるような構造になっている。
小さい診療所の場合は運用保守を自分でやるのもいい。大手メーカーの営業も来ないだろうし、それしか選択肢はないともいう。
セキュリティ
PACSは基本的にサーバー・クライアント型のシステムなので、必ずオンライン・ネットワークを用いるが、病院の場合は患者の病歴などの非常に重い個人情報を取り扱う関係上、セキュリティや個人情報保護の兼ね合いでインターネットではなくイントラネット(LAN)に限定したものが一般的である。
稀に遠隔読影において、インターネットが使われるが、この場合のインターネットとは半ば専用線に近い通信キャリアが提供する回線レベルで認証が付いたルータ設置場所の変更すら難しいガチガチなVPNであることが一般的である。
その他
PACSを導入する際の注意事項として、