「重症熱性血小板減少症候群」の版間の差分
(ページの作成:「{{Infobox disease | Name = 重症熱性血小板減少症候群<br/>severe fever with thrombocytopenia syndrome | Image = | Caption = ...」) |
imported>Administrator 細編集の要約なし |
||
13行目: | 13行目: | ||
| MeshID = D002044 | | MeshID = D002044 | ||
}} | }} | ||
'''重症熱性血小板減少症候群''' (severe fever with thrombocytopenia syndrome, SFTS) とは、新種の[[ウイルス]]「[[SFTSウイルス]] | '''重症熱性血小板減少症候群''' (severe fever with thrombocytopenia syndrome, SFTS) とは、新種の[[ウイルス]]「[[SFTSウイルス]]([[SFTSV]])」 による[[感染症]]、[[病気]]である。 | ||
== 概要 == | == 概要 == | ||
SFTSは主に野山に生息するマダニの一種にかまれることで[[SFTSウイルス]] | SFTSは主に野山に生息するマダニの一種にかまれることで[[SFTSウイルス]]([[SFTSV]])に[[感染]]し[[発症]]するとみられている。致死率は12%程度と推定される。 | ||
[[ | [[SFTSV]]への[[感染]]は2009年ごろに中国で報告され、2012年秋には日本で初の報告がされた。 | ||
== 感染経路 == | == 感染経路 == | ||
SFTSはダニが媒介する[[感染症]] | SFTSはダニが媒介する[[感染症]]であり、主に野山に生息するマダニの一種にかまれて[[SFTSウイルス]]([[SFTSV]])に[[感染]]するものとみられている。中国での報告ではフタトゲチマダニ(Haemophysalis longicornis )やオウシマダニ(Rhipicephalus microplus)などのマダニから[[ウイルス分離]]されている。 | ||
なお、ヒトからヒトへの[[感染]]はほぼ無いため急激に[[患者]]数が増える可能性は極めて小さい。ただし[[医療機関]]では[[診療]]中に[[血液]]や[[体液]]などの[[感染源]]に直接触れることで[[接触感染]]する危険性があるため標準予防策の遵守が重要である。 | なお、ヒトからヒトへの[[感染]]はほぼ無いため急激に[[患者]]数が増える可能性は極めて小さい。ただし[[医療機関]]では[[診療]]中に[[血液]]や[[体液]]などの[[感染源]]に直接触れることで[[接触感染]]する危険性があるため標準予防策の遵守が重要である。 | ||
== 治療方法 == | == 治療方法 == | ||
2013年1月時点で[[SFTSウイルス]]([[SFTSV]])に有効な[[治療薬]]や[[ワクチン]]はない。[[血液]]の管理などの[[対処療法]]のみとなる | |||
== 予防方法 == | == 予防方法 == | ||
32行目: | 32行目: | ||
== 感染事例 == | == 感染事例 == | ||
2013年1月30日、[[厚生労働省]] | 2013年1月30日、[[厚生労働省]]は日本で初めて海外渡航歴のない成人の患者が[[SFTSウイルス]]([[SFTSV]])に[[感染]]し、死亡したと発表した。 | ||
この[[患者]]は昨年秋に[[発熱]]や[[嘔吐]]、[[下痢]]([[黒色便]])などの[[症状]]を訴え[[入院]]した。入院時の[[血液検査]]では[[白血球]]や[[血小板]]の数が低下し、[[AST]]や[[ALT]]、[[LDH]]、[[CK]]の高値、さらに[[血液凝固系]]の異常や[[フェリチン]]の上昇も認められたという。[[尿検査]]では[[血尿]]、[[蛋白尿]]が認められた。[[胸腹部単純CT検査]]では[[右腋窩リンパ節腫大]]を認めた。[[骨髄穿刺検査]]により[[マクロファージ]]による[[血球貪食像]]を伴う[[低形成髄]]の[[所見]]が認められた。 | この[[患者]]は昨年秋に[[発熱]]や[[嘔吐]]、[[下痢]]([[黒色便]])などの[[症状]]を訴え[[入院]]した。入院時の[[血液検査]]では[[白血球]]や[[血小板]]の数が低下し、[[AST]]や[[ALT]]、[[LDH]]、[[CK]]の高値、さらに[[血液凝固系]]の異常や[[フェリチン]]の上昇も認められたという。[[尿検査]]では[[血尿]]、[[蛋白尿]]が認められた。[[胸腹部単純CT検査]]では[[右腋窩リンパ節腫大]]を認めた。[[骨髄穿刺検査]]により[[マクロファージ]]による[[血球貪食像]]を伴う[[低形成髄]]の[[所見]]が認められた。 | ||
39行目: | 39行目: | ||
=== 備考 === | === 備考 === | ||
[[国立感染症研究所]](東京都)で[[入院]]中に[[採血]]された[[患者]]の[[血液]]を調べたところ[[SFTSウイルス]] | [[国立感染症研究所]](東京都)で[[入院]]中に[[採血]]された[[患者]]の[[血液]]を調べたところ[[SFTSウイルス]]([[SFTSV]])が見つかった。この[[SFTSV]]の[[遺伝子]]を調べたところ、中国で見つかったものとは[[塩基配列]]が微妙に異なっており、日本独自の[[SFTSV]]が古くから存在していた可能性が高いとみられる。 | ||
これに伴い[[厚生労働省]]では類似の[[患者]]を[[診察]]した場合には情報提供してほしいとしている。 | |||
<ref>http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrs/3142-pr3963.html</ref> | <ref>http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrs/3142-pr3963.html</ref> |
2013年2月1日 (金) 11:33時点における版
重症熱性血小板減少症候群 severe fever with thrombocytopenia syndrome | |
---|---|
分類及び外部参照情報 | |
ICD-10 | A99 |
ICD-9 | 065.9 |
MeSH | D002044 |
重症熱性血小板減少症候群 (severe fever with thrombocytopenia syndrome, SFTS) とは、新種のウイルス「SFTSウイルス(SFTSV)」 による感染症、病気である。
概要
SFTSは主に野山に生息するマダニの一種にかまれることでSFTSウイルス(SFTSV)に感染し発症するとみられている。致死率は12%程度と推定される。
SFTSVへの感染は2009年ごろに中国で報告され、2012年秋には日本で初の報告がされた。
感染経路
SFTSはダニが媒介する感染症であり、主に野山に生息するマダニの一種にかまれてSFTSウイルス(SFTSV)に感染するものとみられている。中国での報告ではフタトゲチマダニ(Haemophysalis longicornis )やオウシマダニ(Rhipicephalus microplus)などのマダニからウイルス分離されている。
なお、ヒトからヒトへの感染はほぼ無いため急激に患者数が増える可能性は極めて小さい。ただし医療機関では診療中に血液や体液などの感染源に直接触れることで接触感染する危険性があるため標準予防策の遵守が重要である。
治療方法
2013年1月時点でSFTSウイルス(SFTSV)に有効な治療薬やワクチンはない。血液の管理などの対処療法のみとなる
予防方法
野外でマダニに噛まれないように注意する。野山などへ入るときは肌が露出しないようにするなどの古くから行われている一般的なマダニ対策を徹底すること。
感染事例
2013年1月30日、厚生労働省は日本で初めて海外渡航歴のない成人の患者がSFTSウイルス(SFTSV)に感染し、死亡したと発表した。
この患者は昨年秋に発熱や嘔吐、下痢(黒色便)などの症状を訴え入院した。入院時の血液検査では白血球や血小板の数が低下し、ASTやALT、LDH、CKの高値、さらに血液凝固系の異常やフェリチンの上昇も認められたという。尿検査では血尿、蛋白尿が認められた。胸腹部単純CT検査では右腋窩リンパ節腫大を認めた。骨髄穿刺検査によりマクロファージによる血球貪食像を伴う低形成髄の所見が認められた。
そして約1週間後に四肢脱力および肉眼的血尿と多量の黒色便を認め、全身状態が不良となり死亡した。
備考
国立感染症研究所(東京都)で入院中に採血された患者の血液を調べたところSFTSウイルス(SFTSV)が見つかった。このSFTSVの遺伝子を調べたところ、中国で見つかったものとは塩基配列が微妙に異なっており、日本独自のSFTSVが古くから存在していた可能性が高いとみられる。
これに伴い厚生労働省では類似の患者を診察した場合には情報提供してほしいとしている。