嘔吐
ICD-10 | R11 |
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ICD-9 | 787 |

嘔吐(読み:おうと、英語:vomiting、ギリシア語:emesis)とは、動物やヒトの口(ときどき鼻)から胃の内容物を非自発的に吐き出す症状である。
目次
概要[編集 | ソースを編集]
一般に過度の飲酒や摂食、腐敗・変質した食物の摂取、過度の運動、体調不良などの際にまず脳内の「嘔吐中枢」が刺激され、「吐き気」を催し、それに続いて嘔吐する。また、放射線を浴びすぎると嘔吐する場合もある。頭蓋内圧が高い場合には特にその傾向が強い。ただし吐き気が来ないままいきなり嘔吐する場合もあり、とくに乳幼児や泥酔している場合にこのような嘔吐が起きる。基本的に嘔吐は咳や嚏(くしゃみ)、射精と同様、反射であることから、本人の意思では制御できない。
また、自動車や船舶、遊園地の遊具などで長時間もしくは激しく揺れる環境下にあった場合、「乗り物酔い」が発生して嘔吐に至る場合がある。この他、高温になる閉所、きつすぎる衣服(日本ではほぼ着物)、帽子、ヘルメット、日本髪の鬘(結婚式や舞踊発表会などに多い)など、重量があったり蒸れたりする物を長時間着用の場合や、他者の嘔吐(いわゆる貰いゲロ)や吐瀉物、排泄物などを見たり聞いたり各種の悪臭を嗅いだり、恐怖映画、マインドクラッシャー等の不快な映像、音声を見たり聞いたりした場合にも、精神的なストレスから、吐き気・嘔吐を引き起こす場合が多い。バス酔いなどする人は、予めエチケット袋(ビニール袋など)を持ったり、薬局などで売られている酔い止め薬を乗車前に飲むと良い。長距離バスや観光バスなどでは、エチケット袋が用意されている場合が多い。
嘔吐行為を強制的に停止させようとするとパニック状態に陥る場合がある。
嘔吐の結果、吐き出されたものを「吐瀉物(としゃぶつ)」と呼ぶ。また舌の奥に指を入れたりして吐き気を催すことを「嘔吐反射」という。
早期の治療が必要な場合[編集 | ソースを編集]
前述した要因に当てはまらず、頭痛など他の部位の症状を伴う嘔吐の場合には、臓器や脳・神経系の損傷などと言った、別の病因による副次的な症状である可能性があり、場合によっては生命の危険にかかわる。このため早急な医師の診察が必要である。
一般的に嘔吐した場合、吐瀉物は胃酸を中心に胃の内容物であるが、胃炎や胃潰瘍などの病気により発生した場合には、それら以外に血液を含む場合がある。状態によって以下のような、それぞれ別の原因によるものである。
吐き方・吐かせ方[編集 | ソースを編集]
嘔吐物が気管に入らないように頭を下に向けて吐かせる。吐くだけ吐いてすっきりさせる。
気分が悪く吐きそうだが吐けないなどの場合は、指を舌の奥に入れるなどの嘔吐反射を用いる。
特に臭気が不快感を催させるため、吐瀉物の処理は屎尿など汚物全般に準じ、また嘔吐に際して着衣が汚れないよう注意を必要とする。
吐いた後は十分に水分及び塩分の補給をすべきであるが、その際に冷たいものを飲ませるとそれが胃に刺激を与え、さらに吐いてしまう場合があるため、体温程度に温めたスポーツドリンクなどを与えるのが望ましい。
意識を失っている場合や、意識がはっきりしない場合などは、嘔吐の後に窒息する危険性があるため、喉の奥や鼻腔の中に吐瀉物が詰まっていないか注意する必要がある。緊急的には指で掻き出したり、後ろから抱きかかえて鳩尾(みぞおち)を斜め後ろ上方に押し込むなど、喉の奥にモノが詰まった時同様の処置をするが、乳幼児の場合などでは、逆さにして背を強く叩いたり、大人が口で幼児の鼻と口を覆って吸い出すことも行われる場合がある。
吐かせた、または吐いた後は、患者に回復体位を取らせるのが望ましいが、回復体位を取らせるのが難しい場合は、嘔吐物により窒息しないために体を横に向けて寝かせる。特に意識が朦朧としている場合や意識を失っている場合、嘔吐物が気管に入り、窒息の危険がより高まるために仰向けに寝かせてはならない。
また、飲み込んだ物を強制的に吐かせるために催吐薬を用いる場合もある。
合併症[編集 | ソースを編集]
吐瀉物の吸引[編集 | ソースを編集]
吐瀉物が上気道に入ると窒息や誤嚥性肺炎の可能性があり非常に危険である。 通常の嘔吐や嘔吐反射では自然とこれを防ぐ動作が発生するためほとんど起きないが、アルコールや麻酔などの影響下で嘔吐する場合には注意が必要である。
脱水および電解物の不均衡[編集 | ソースを編集]
過度の嘔吐では水分が急激に排出され脱水に陥る。 また、胃液には電解質が含まれるため、水分だけでなく電解質も減少する。
結果として、酸性の体液を大量に喪失することで血液のpHはアルカリ性に傾き、またHCO−
3と CO
2が増加することで代謝性アルカローシスとなり、最終的に低カリウム血症を引き起こすことがある。
マロリー・ワイス症候群[編集 | ソースを編集]
マロリー・ワイス症候群(Mallory-Weiss syndrome)とは、嘔吐後に胃の噴門部から食道の下部にかけて裂傷が生じ、出血を起こす症候群である。 マロリー・ワイス症候群は食道炎の一種であるが、症状が進むと激しい嘔吐が繰り返され、それによりさらに傷口が広がり、時には大量の出血を伴ってしまうという悪循環に陥る。
歯学[編集 | ソースを編集]
歯学的には吐瀉物が酸性であるため歯のエナメル質の破壊につながる事があるそうだ。 また、消化酵素によって歯茎の組織が分解されることで口腔の健康に悪影響を及ぼすこともある。
嘔吐した際にはうがいもした方がいいようだ。
治療方法[編集 | ソースを編集]
嘔吐が見られる場合は、いかなる場合でも至急医師の診察を受け、原疾患の治療を受けるべきである。
小児科領域の嘔吐[編集 | ソースを編集]
成人では消化器の領域の感染症や潰瘍などによって起こる嘔吐が最も多いのだが、小児ではその他の疾患も鑑別に上がってくる。先天性腸閉鎖は腸回転異常でも起こるし、輪状膵でも起こりえる。治療には原因精査が必要である。これらの疾患ではその他の奇形の精査も重要となることがある。
発症時期 | 疾患 | 吐物 | 画像所見 |
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出生直後 | 先天性食道閉鎖症 | 泡沫様 | coil up sign |
出生数時間~1週間 | 先天性腸閉鎖症 | 胆汁性 | microcolon 多数のniveau |
出生数時間~1週間 | 鎖肛 | 直腸体温計が入らない、倒立位撮影 | |
出生数時間~1週間 | ヒルシュスプルング病 | megacolon caliber change narrow segment | |
出生2,3週 | 肥厚性幽門狭窄症 | 噴水状嘔吐 | string sign umbrella sign showlder sign |
数ヶ月~2歳 | 腸重積 | 胆汁性、黄色吐物 | かにの爪、target sign |
動物の嘔吐[編集 | ソースを編集]
ウサギ[編集 | ソースを編集]
ウサギは胃の噴門と幽門が接近しているため、嘔吐することができない。
カエル[編集 | ソースを編集]
ネコ[編集 | ソースを編集]
ネコもよく嘔吐する動物でありその原因は毛玉だと思われているが、頻繁に続く場合は至急獣医師の診察を受け、原疾患の治療を受けるべきである。