「核磁気共鳴断層撮影」の版間の差分

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'''核磁気共鳴画像法''' (英 Magnetic Resonance Imaging, '''MRI''')とは、[[核磁気共鳴現象]]を利用して生体の内部の情報を画像にする方法。
'''核磁気共鳴断層撮影''' (英 '''M'''agnetic '''R'''esonance '''I'''maging, '''MRI''')とは、[[核磁気共鳴現象]]を利用して生体の内部の情報を画像にする方法である。[[DICOM]]規格による[[モダリティコード]]は「MR」であり、医療現場においてもMRIより'''MR'''という呼称の方が定着している。


[[DICOM]]規格による[[モダリティ]]記号は「MR」であり、医療現場においてもMRIよりMRという呼称の方が定着しているのが一般的である。
なお[[製薬会社]]の営業担当者を意味する[[メディカル・リプレゼンタティブ]](通称[[MR]])とは一切関係ない。
また[[麻疹・風疹混合ワクチン]]([[MRワクチン]])とも一切関係ない。


[[]]の内部や[[脊髄]]、[[腹部]]、[[血管]]、[[四肢]]など[[人体]]のあらゆる部分を任意の角度から撮影し[[断層画像]]を得ることが可能。[[CTスキャン]]では不得手な部分の断面画像や三次元的な情報の撮影において優れている。
== 概要 ==
核磁気共鳴断層撮影装置(MRI装置)は、[[薬事法]]において[[医療機器#特定保守管理医療機器|特定保守管理医療機器]]と定められている。


MRIは[[磁気]]([[超伝導電磁石]])と[[電波]]を用いる[[検査機器]]であり、[[放射線]]とは全く無縁であるが、主に[[放射線科]]で取り扱われるため、放射線機器ではないが名目上は[[医用放射線機器]]とされる。
MRI装置は[[磁気]]([[超伝導電磁石]])と[[電波]]([[RFパルス]])を用いる[[検査機器]]であり、[[放射線]]とは全く無縁であり放射線機器ではないが、主に[[放射線科]]で取り扱われるため名目上は[[医用放射線機器]]とされる。


MRIでは[[脳]]の内部や[[脊髄]]、[[腹部]]、[[血管]]、[[四肢]]など[[人体]]のあらゆる部分を任意の角度から撮影し[[断層画像]]を得ることが可能である。[[CTスキャン]]では不得手な部分の断面画像や三次元的な情報の撮影において優れている。なお、[[MR]]と[[CT]]はどちらが優れているかを論ずるものではなく、それぞれ適材適所で使い分けるものである。
MRIのマイナス面は、超伝導電磁石を冷却するために液体ヘリウムを用いた冷却設備などが必要であり、設備投資や運用にかかるコストが高く、どの[[医療機関]]でも使える状況にはない。また測定時の所要時間が10分から1時間と長い。その特性上、[[骨]]や[[石灰化]]した部分の詳細画像は必ずしも上手く得られない。
MRIと同様に磁場を用いるものとして[[ピップ・エレキバン]]があるが、その強さは1000[[ガウス]]前後であるのに対して、MRIではその10~30倍前後の10,000~30,000[[ガウス]]近辺の非常に強い磁場が発生する。なお、MRIでよく使われる磁気の強さの単位は[[ガウス]]ではなく[[テスラ]](T)が主に用いられ(1[[テスラ]]は10000[[ガウス]])に相当し、その強度(最大出力)はMRIの製品名の一部に1.5Tや3Tなどと書かれている事が多い。
== 安全性 ==
放射線機器ではないので[[被曝]]の心配などまったく無いが、強烈な磁気および電波による人体の影響は未知数であるとされている。
放射線機器ではないので[[被曝]]の心配などまったく無いが、強烈な磁気および電波による人体の影響は未知数であるとされている。


MRIのマイナス面は、超伝導電磁石を冷却するために液体ヘリウムを用いた冷却設備などが必要で、設備や運用にかかるコストが高く、どの[[医療機関]]でも使える状況にはない。測定時の所要時間が10分から1時間と長い。その特性上、[[骨]]や石灰化した部分の詳細画像は必ずしも上手く得られない。
なお、カタログを見る限り、そのような未知数な事項よりも、狭いMRI装置の中に入ることによる閉塞感と、そこに追い打ちをかけるカコンカコンとうるさいMRI装置の動作音による恐怖感を少しでも抑制しようと[[モダリティメーカー]]各社は努力しているようである。
 
強烈な磁場(電磁石)を用いるため、検査前の安全確認として、身につけている磁性体を検チェックする必要がある。[[ペースメーカー]]を装着している人は磁場の影響で正常動作をしなくなる恐れがあるため、[[検査]]は出来ない。


MRIと同様に磁場を用いるものとして[[ピップ・エレキバン]]があるが、その強さは1000[[ガウス]]前後であるのに対して、MRIではその10倍前後の10000[[ガウス]]近辺の非常に強い磁場が発生する。なお、MRIでよく使われる磁気の強さの単位は[[ガウス]]ではなく[[テスラ]](T)が主に用いられ(1[[テスラ]]は10000[[ガウス]])、MRIの製品名の一部に1.5Tや3Tなどと書かれている事が多い。
強烈な磁場(電磁石)を用いるため、検査前の安全確認として、身につけている磁性体を検チェックする必要がある。たとえば[[ペースメーカー]]を装着している人は磁場の影響で正常動作をしなくなる恐れがあるため、[[検査]]は出来ない。


== MRIの原理 ==
== MRIの原理 ==
MRIの原理の概要について説明する。詳細は[[モダリティメーカー]]や機種によって微妙に異なるので、各機種の資料を見ること。
MRIの原理の概要について説明する。詳細は[[モダリティメーカー]]や機種によって微妙に異なるので、各機種の資料を見ること。


(1) 体内の水素原子核は、自然な状態では、それぞれバラバラな方向を向いている。
(1) 体内の[[水素原子核]]は、自然な状態では、それぞれバラバラな方向を向いている。


(2) そこへ強烈な磁場(静磁場、せいじば)を与えると、水素原子核は一斉に同一方向を向く。
(2) そこへ強烈な磁場([[静磁場]]、せいじば)を与えると、[[水素原子核]]は一斉に同一方向を向く。


(3) そこへ特定の周波数の電波(RFパルス)を当てると、水素原子核は一斉に一定角度に傾く。
(3) そこへ特定の周波数の電波([[RFパルス]])を当てると、[[水素原子核]]は一斉に一定角度に傾く。
その運動の周波数はラーモア周波数と言われ、各原子核に固有の周波数であり、かけた磁場の強さに比例する。通常のMR撮像では、8.5~128MHzほどである。これは電磁波で言えばラジオ波の範囲にあたる。
その運動の周波数はラーモア周波数と言われ、各原子核に固有の周波数であり、かけた磁場の強さに比例する。通常のMR撮像では、8.5~128MHzほどである。これは電磁波で言えばラジオ波の範囲にあたる。


(3) この電波照射をやめると、水素原子核は(2)の状態(方向、角度)に戻ろうとするが、その際に微弱な電波信号を発する。また、この(2)の状態に戻るまでの時間が[[体組織]]によって異なる(微弱な電波信号を発してる時間が違う)。この微弱な電波を撮影部位に取り付けたRFコイルで受信する。
(4) この電波照射をやめると、[[水素原子核]]は(2)の状態(方向、角度)に戻ろうとするが、その際に微弱な電波信号を発する。また、この(2)の状態に戻るまでの時間が[[体組織]]によって異なる(微弱な電波信号を発してる時間が違う)。この微弱な電波を撮影部位に取り付けた[[RFコイル]]で受信する。
 
(5) (3)および(4)の状態に、微弱な磁場([[傾斜磁場]]、けいしゃじば)を断続的に当てて取得した位置情報を加味することで、3次元的な画像データを取得することができる。
 
== 主なMRIの撮影法 ==
* [[T1強調画像]] - T1を強調して
* [[T2強調画像]]
* [[T2スター強調画像]]
* [[FLAIR]]
* [[拡散強調画像]]
* [[MRA]]
*: 移動している[[プロトン]]のみを高信号とする撮影方法。[[体内]]で勢いよく動いている物と言えば[[血液]]くらいなので、そこから輪郭抽出すると[[血管]]が浮かび上がる。
 
== 関連項目 ==
* [[磁気共鳴血管撮影]]
* [[コンピュータ断層撮影]]
* [[マルチスライス]]
* [[再構成]]
* [[DICOM]]
* [[モダリティ]]
* [[時定数]]
 
== 参考文献 ==
{{reflist}}


(4) (2)および(3)の状態に、微弱な磁場(傾斜磁場、けいしゃじば)を断続的に当てて取得した位置情報を加味することで、3次元的な画像データを取得することができる。
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2013年12月9日 (月) 17:16時点における最新版

核磁気共鳴断層撮影 (英 Magnetic Resonance Imaging, MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体の内部の情報を画像にする方法である。DICOM規格によるモダリティコードは「MR」であり、医療現場においてもMRIよりMRという呼称の方が定着している。

なお製薬会社の営業担当者を意味するメディカル・リプレゼンタティブ(通称MR)とは一切関係ない。 また麻疹・風疹混合ワクチンMRワクチン)とも一切関係ない。

概要[編集 | ソースを編集]

核磁気共鳴断層撮影装置(MRI装置)は、薬事法において特定保守管理医療機器と定められている。

MRI装置は磁気超伝導電磁石)と電波RFパルス)を用いる検査機器であり、放射線とは全く無縁であり放射線機器ではないが、主に放射線科で取り扱われるため名目上は医用放射線機器とされる。

MRIではの内部や脊髄腹部血管四肢など人体のあらゆる部分を任意の角度から撮影し断層画像を得ることが可能である。CTスキャンでは不得手な部分の断面画像や三次元的な情報の撮影において優れている。なお、MRCTはどちらが優れているかを論ずるものではなく、それぞれ適材適所で使い分けるものである。

MRIのマイナス面は、超伝導電磁石を冷却するために液体ヘリウムを用いた冷却設備などが必要であり、設備投資や運用にかかるコストが高く、どの医療機関でも使える状況にはない。また測定時の所要時間が10分から1時間と長い。その特性上、石灰化した部分の詳細画像は必ずしも上手く得られない。

MRIと同様に磁場を用いるものとしてピップ・エレキバンがあるが、その強さは1000ガウス前後であるのに対して、MRIではその10~30倍前後の10,000~30,000ガウス近辺の非常に強い磁場が発生する。なお、MRIでよく使われる磁気の強さの単位はガウスではなくテスラ(T)が主に用いられ(1テスラは10000ガウス)に相当し、その強度(最大出力)はMRIの製品名の一部に1.5Tや3Tなどと書かれている事が多い。

安全性[編集 | ソースを編集]

放射線機器ではないので被曝の心配などまったく無いが、強烈な磁気および電波による人体の影響は未知数であるとされている。

なお、カタログを見る限り、そのような未知数な事項よりも、狭いMRI装置の中に入ることによる閉塞感と、そこに追い打ちをかけるカコンカコンとうるさいMRI装置の動作音による恐怖感を少しでも抑制しようとモダリティメーカー各社は努力しているようである。

強烈な磁場(電磁石)を用いるため、検査前の安全確認として、身につけている磁性体を検チェックする必要がある。たとえばペースメーカーを装着している人は磁場の影響で正常動作をしなくなる恐れがあるため、検査は出来ない。

MRIの原理[編集 | ソースを編集]

MRIの原理の概要について説明する。詳細はモダリティメーカーや機種によって微妙に異なるので、各機種の資料を見ること。

(1) 体内の水素原子核は、自然な状態では、それぞれバラバラな方向を向いている。

(2) そこへ強烈な磁場(静磁場、せいじば)を与えると、水素原子核は一斉に同一方向を向く。

(3) そこへ特定の周波数の電波(RFパルス)を当てると、水素原子核は一斉に一定角度に傾く。 その運動の周波数はラーモア周波数と言われ、各原子核に固有の周波数であり、かけた磁場の強さに比例する。通常のMR撮像では、8.5~128MHzほどである。これは電磁波で言えばラジオ波の範囲にあたる。

(4) この電波照射をやめると、水素原子核は(2)の状態(方向、角度)に戻ろうとするが、その際に微弱な電波信号を発する。また、この(2)の状態に戻るまでの時間が体組織によって異なる(微弱な電波信号を発してる時間が違う)。この微弱な電波を撮影部位に取り付けたRFコイルで受信する。

(5) (3)および(4)の状態に、微弱な磁場(傾斜磁場、けいしゃじば)を断続的に当てて取得した位置情報を加味することで、3次元的な画像データを取得することができる。

主なMRIの撮影法[編集 | ソースを編集]

関連項目[編集 | ソースを編集]

参考文献[編集 | ソースを編集]