バーチャル・スライド・システム
バーチャル・スライド・システム(英語:virtual slide system)とは、バーチャル顕微鏡の一種でプレパラート上の標本をデジタル画像化するスキャナ装置、および専用ビューアなどのシステム一式のことである。単にバーチャルスライドと呼ばれることも多い。
概要[編集 | ソースを編集]
バーチャルスライドはプレパラート専用のイメージスキャナーと思って間違いない。プレパラート全体を隈無くスキャンし、後からゆっくりパソコンで見られるというものである。
普通の顕微鏡であれば1人しか見えないが、バーチャルスライドは事前に撮影した画像なので、プロジェクターで大画面に映し出したり、一度に複数人で同時に閲覧することができる。この利点から大学病院などにおいて教育用に使われていることが多い。
なお、バーチャルスライドはマウスでぽちぽち操作できてしまうので普通の顕微鏡の使い方がわからない者が育ってしまうという問題点もある。バーチャルスライドは非常に高額なシステムであるため、学生の卒業後の就職先にも導入されている限らないため、普通の顕微鏡の使い方も教えることが大切である。
スライドローダー[編集 | ソースを編集]
2013年時点のバーチャルスライドでは、プレパラート1枚をスキャンするのには非常に時間がかかるため、スライドローダーと呼ばれるものに複数のプレパラートをセットしておき、夜中のうちにスキャンを実行しておくなどの運用が一般的である。いわゆる書籍の自炊などに使われるイメージスキャナーの紙送り機構のようものである。
バーチャルスライドの価格は一度に挿入できるプレパラートの枚数で決まると言っても過言ではない。当然のように枚数が増えるほど高い。
ちなみにスライドローダーの形式形状によっては昭和初期などに使われていたガラス板を手切りした古いプレパラートを突っ込むと詰まる。スライドガラスの寸法サイズが規格化されたのは1986年[1]のことなので、それ以前の標本はあぶない。個人的に使った感じではトレイに填める(窪みに置く)タイプが詰まらなくて良い。
画像ファイル[編集 | ソースを編集]
バーチャルスライドでスキャンされた画像は縦横のピクセル数が10万ピクセルを超える巨大なサイズとなる。これは一般的な一眼レフカメラなどのデジカメで撮影した写真ファイルの何十倍という巨大な数字である。
JPEGなどの広く知られている画像ファイルや、医用画像の標準形式であDICOMなどのフォーマットでは、縦幅と横幅が16ビット(0〜65535ピクセル)となっていることが多く、一辺の長さが余裕で65535ピクセルを超えるバーチャルスライド画像は格納しきれない。このため各社様々な専用フォーマットを採用しており、それらはGoogleマップのような操作性を持つ専用ビューアで閲覧する。本当にGoogleマップのように動くサーバー型のビューアもある。
なお、DICOMでは縦幅と横幅が16ビット(0〜65535ピクセル)という仕様を改訂し、バーチャルスライドに対応しようという議論がなされていたが、最近では盛り下がっている感じで進展はないようである。
注意[編集 | ソースを編集]
なお、バーチャルスライドの画像ファイルのフォーマットは各社独自形式だが、浜松ホトニクスなどの一部のメーカーについては画像ファイルのフォーマットを一般公開している。これにより様々なフリーソフトの利用はもとより、各種画像解析などの研究にも応用が可能となる。個人的な選定基準はこの点であった。
逆にフォーマットが非公開となっているメーカーの製品を購入すると後々ゴミとなる可能性が非常に高いので注意する必要がある。直近の画像を見る以外の用途には使えないゴミカスウンコである。購入時には絶対に確認しよう。
関連項目[編集 | ソースを編集]
外部リンク[編集 | ソースを編集]
- 滋賀医科大学 分子診断病理 実習標本アルバム
- 浜松ホトニクスのNanoZoomerがインターネット上から誰でも利用できるように配備されており、200以上の非常に有用な標本も登録されている。学生の学習はもとより、バーチャルスライドとは何かを知らない世代が体験する場としても有用である。
参考文献[編集 | ソースを編集]
- ↑ [http://www.iso.org/iso/home/store/catalogue_tc/catalogue_detail.htm?csnumber=15048 ISO 8037-1:1986 Optics and optical instruments -- Microscopes -- Slides -- Part 1: Dimensions, optical properties and marking]