肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンとは、肺炎球菌に有効なワクチンである。肺炎球菌以外の病原体による肺炎には効果がない。
小児用肺炎球菌ワクチン[編集 | ソースを編集]
小児用肺炎球菌ワクチンとは、5歳未満の乳幼児の髄膜炎や中耳炎を予防するためのワクチン。小さな子どもは肺炎球菌に対して抵抗力(抗体)をもっておらず、小児用の肺炎球菌ワクチンを接種することで抗体を作る必要がある。
厚生労働省の調査では、乳幼児の髄膜炎の発症者は年間400人以上(推計値550人)とされ、死亡する確率は2~5%。後遺症の残るケースも10~25%とされる。
副反応[編集 | ソースを編集]
発熱[編集 | ソースを編集]
小児用肺炎球菌ワクチンを接種すると37.5℃以上の熱が出ることがある。熱は38℃や39℃以上に及ぶこともある。発熱のほとんどは接種した当日や翌日に認められ、その多くは1~2日で下がる。普段と様子が大きく異なるときや発熱が3日以上続くなど、心配な場合はかかりつけ医に相談すること。なお、一度発熱したことがある方が、必ずしも次回の接種で発熱がおこるわけではない。
発疹[編集 | ソースを編集]
小児用肺炎球菌ワクチンを接種すると発疹を認めることがある。発疹は、湿疹のようなもの、じんましんの様に地図状にもりあがりかゆみを伴うもの、皮膚全体が赤くなるものなど様々である。また、身体の一部に現れることが多いが、希に全身に認めることもある。発疹は通常2~3日以内に消えるが、なかなか消えない場合にはかかりつけ医に相談すること。
注射部位の異常[編集 | ソースを編集]
小児用肺炎球菌ワクチンを注射した部位が腫れたり、赤くなったり、あるいは硬くなったりすることがある。一般的にワクチンを接種したときの赤みや腫れは3~4日で消えるとされている。この状態が1か月後でも残る場合もある。注射部位の異常が目立つときや、その他心配な場合はかかりつけ医に相談すること。
世界[編集 | ソースを編集]
2007年にWHO(世界保健機関)は小児用の肺炎球菌ワクチンを世界中で定期接種を推奨する声明を発表した。これは先進国や発展途上国を問わず、各国において肺炎球菌による病気の被害が多いためである。
この声明をうけ、100カ国近い国々で肺炎球菌ワクチンが取り入れられ(2010年時点)、肺炎球菌ワクチンを定期接種をしている国では細菌性髄膜炎などの重い感染症の発症率が大幅に低下したとされている。
日本[編集 | ソースを編集]
日本においては乳幼児の髄膜炎などを予防する肺炎球菌ワクチン「プレベナー」(ワイス社、東京都)が2009年8月31日に厚生労働省薬事・食品衛生審議会の部会で承認され、2010年2月から発売が開始された。
だがその後、小児用肺炎球菌ワクチンとインフルエンザ菌B型ワクチン(ヒブワクチン)の予防接種後に乳幼児4人が相次いで亡くなったことをうけ、2011年3月4日より厚生労働省はいずれのワクチンも接種を一時見合わせることを決め、自治体や販売業者に通知した。
2011年4月1日に厚生労働省及び専門家会議による国内・海外の安全性データの包括的な検討の結果、小児用肺炎球菌ワクチンには安全性上の懸念はないと評価され、一時的な見合わせが解除された。
接種は任意だが、同様に細菌性髄膜炎などを予防するヒブワクチンとともに、国の2010年11月からの助成事業を受けて、各自治体で接種費用を無料化する動きが広がっている。
成人用肺炎球菌ワクチン[編集 | ソースを編集]
成人用肺炎球菌ワクチンとは、肺炎球菌に対する抗体を持つ人の抗体を強化するためのワクチンである。
小児用肺炎球菌ワクチンが抗体を「作る」のに対して、成人用肺炎球菌ワクチンは抗体を「強化」するものである。よって抗体を持たない乳幼児に接種しても意味がない。一方、成人用と銘打ってるが乳幼児期を過ぎたあたりで(早い子供では2歳過ぎくらいで)子供でも抗体は出来上がってるので対象となる。
成人用肺炎球菌ワクチンも小児用肺炎球菌ワクチンと同じく肺炎球菌以外の病原体による肺炎には効果がない。
成人用肺炎球菌ワクチンは1927年に開発され、日本では「ニューモバックス」(万有製薬)として流通している。肺炎球菌には80種類以上の型があるが、成人用肺炎球菌ワクチン接種により、そのうちの23種類に対して免疫をつけることができる。肺炎球菌による肺炎の8割ぐらいに有効。
関連項目[編集 | ソースを編集]
参考文献[編集 | ソースを編集]