放射線被曝などに関するQ&A

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皆様に適切かつ冷静な判断をお願いします。これまで日本医学放射線学会等へ寄せられた質問に対する答えをまとめました。

Q1

いろいろな環境数値が発表されています。例えば昨日は東京新宿区で、0.05マイクロシーベルト、福島原発の半径30キロメートル内80マイクロシーベルトとあります。これは人体へ影響のある数値でしょうか。

A1

これらの数字は一時間あたりの線量を示します。半径30キロメートル以内は屋内退避で、建物の中に居るはずですから、半径30キロメートル内が、大きな数値であると心配する必要はありません。皆さんがいまいる場所の情報をご確認ください。 放射線の量は原子力発電所から放出された放射性物質とどのくらい接触したかによります。実際にみなさんが住んでいる場所では、きわめて小さな値なのです。さらに、室内にいると、外部からの放射線を建物がさえぎりますから放射線の量はさらに少なくなります。 つまり、行政からの指示に従い、行動する限り、被ばくによる健康への影響はありません。

Q2

妊婦やお腹の中の赤ちゃんや小さな子供のほうが放射線の影響を受けやすいのでしょうか?

A2

今皆さんがどこにいても、地域の放射線量は妊婦や子供への影響を心配するには及ばない少ない線量です。妊婦になると、突然放射線の影響を強く受けるように、体質が変わるわけではありません。普通の大人と同じです。

大人より子供(小学生くらいまで)の方が、大量に放射線を浴びた場合の影響は2~3倍高いと考えられています。しかし、子供の方が極端に放射線の影響を受けやすい訳ではありません。通常、放射線の専門家が子供には配慮をしましょうと伝えているのは、子供は大人よりも将来の時間が長く、将来どのような健康状態になるかがわからない今の段階では、なるべく注意をはらっておこう、と考えているからです。いろいろな場面で、大人達が「子供は将来があるから大切にしよう」と思うことと同じです。

最近の研究では、お腹の中の赤ちゃんは、私たち専門家も驚くほど、細胞の中の遺伝子が放射線の影響を受けないことが明らかになりました。お母さんは体内の子宮で自らの子を守っています。お母さんの身体が遮ってくれるので、外から放射線を浴びても、その半分以下の放射線量しか赤ちゃんには届きません。


Q3

妊婦はX線検査を受けると危ないと聞いているから普通の人より放射を気にしたほうが いいの?と思ってしまいます。

A3

妊娠の方が病気になった場合、お母さんの健康を守り、丈夫な赤ちゃんを産んでいただくために、どこの病院でも安全に放射線検査を行っています。 検査のために用いる放射線の量はごくわずかです。妊娠中のどの時期に検査をうけても、お子さんへの影響を心配する必要はありません。今回のことで体調を悪くされているお母さんは、安心して必要な検査を受けてください。


Q4

子供を外で遊ばせてもいいですか?

A4

子供が外で遊ばないことによる、ストレスは非常に大きいと思います。

東京などの現地から離れたところでも環境の放射線量がいつものより多いからと心配になるかもしれませんが、放射線量としては微量です。子供を外で遊ばせても全く問題はありません。また、地震の影響の強いところは基本的に外で遊べる状況ではない、危険な状態だと思いますが、屋内退避の勧告が出ていない地域では、いつもどおり生活していただいてかまいません。


Q5

放射性を身体から取り除く効果的な対策は何ですか?

A5

環境中の放射線量が増えている原因は、空気中を浮遊している物質に、放射線を出す性質をもった物質が、通常よりも多く混ざっているためです。この放射線を出す性質がある物質(放射性物質)は、ほとんど目に見えない微細な粒子として、空気中に浮遊しています。この時期花粉症の方も多いと思いますので、いつもなさっている、服のほこりを家に入る前にはらうなどの花粉症対策をすれば、同時に放射線性物質も取り除くことができます。


Q6

放射性物質が長時間、皮膚に付着すると害があるのでしょうか?

A6 ; 空気中を浮遊している放射性物質は、手や身体に付いて残っていても特に害を及ぼすことはありません。そのような大量の放射線量は出ません。また、皮膚のついた放射性物質は簡単な除染処置という方法で取り除くことができます。


Q7

放射線被ばくに不安があるのですが、どこへ問い合わせたらいいですか?

A7

今皆さんが健康被害を心配する必要はありません。各地の病院スタッフは、悪性腫瘍や急性外傷等の患者の健康を守るために日常診療を行っています。ご不安な気持ちはわかりますが、病院へ電話をして医師に個別健康相談をお願いしていると診療が止まってしまいますから、これだけはご遠慮ください。どうしても不安な場合は、現在多くの行政機関が対応窓口を設置しはじめています。都道府県単位で行っていますから、地域の状況により異なります。政府機関からの情報が提供されています。また、放射線医学総合研究所、日本医学放射線学会のHPには相談者本人が連絡を入れるコーナーはありますが、いずれも問い合わせが殺到しており、重大な相談を優先して解答していることをご承知おきください。NHKをはじめとする、マスコミの報道に冷静に耳を傾けていただければ、多くのことが解決されると思います。


Q8

自分もサーベイメータによる汚染検査を受けたいのですが

A8

避難している皆さんを計測している中で、これまでにサーベイメータの計測値が、避難している皆さんを計測してきわめて高い数値を示したとの報告はありません。被災地よりも遠くにお住まいの方は、このような検査を受ける必要はありません。


Q9

被災地から避難した人をそのまま受け入れてもいいですか?

A9

親戚の方など、被災地から避難したような方を受け入れてあげる時は、お家に着いたら服のほこりを良く払ってあげ、長旅の疲れをいやすためにシャワーを貸してあげてください。これで放射性物質は充分取り去ることができます。また、自動車で移動された方は、長時間運転してきた間に、車の表面に様々なほこりが付いています。自動洗車機等を用いた自動車の洗車ができればなお宜しいかと思います。


Q10

放射線防護剤(安定ヨウ素剤)をほしいのですが

A10

ヨウ素剤を飲むと甲状腺に多く集まる放射性物質を防御できることは、マスコミ報道などにより皆さんも聞いていらっしゃると思います。これは、本当に手の付けられないような大惨事に人が巻き込まれたときに、医師が若い方への投与を判断します。甲状腺の癌を心配する声が一部にはありますが、大人にとって甲状腺は放射線の影響をあまり受けない臓器です。子供は大人よりも影響受け易いので、まずは子供から考えるように投与方法も決まっています。しかし、島国の日本ではロシアなど内陸地の国民に比べてもともと甲状腺内のヨウ素は充分にあります。また実際に投与を受ける必要があるほど放射線を浴びる可能性は現状では考えられません。なお、市販のうがい薬などを飲むことは危険ですのでやめてください。

現在、関東以西の状況は落ち着いていますが、今回の一般市民の放射線汚染報道以後、全国の医療機関に不安を持った皆様からの問い合わせが続いています。 妊娠中のお母様方のご心痛は察するにあまりありますが、現在放射線被ばくについて検討の対象となっている方々は、いずれも原発の復旧作業のために尽力をしている方々です。また、この方々から体調に影響するような大量の方放射線を浴びた方はいらっしゃいません。 皆様もどうぞ落ち着いて健やかにお過ごしください。