レトロウイルス

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レトロウイルス科
分類(ウイルス)
: 第6群(1本鎖RNA + 鎖逆転写)
: レトロウイルス科 Retroviridae
下位分類群

スプマウイルス亜科 spumavirinae
レンチウイルス亜科 Lentivirinae
オンコウイルス亜科 oncvirinae
オルソレトロウイルス亜科 Orthoretrovirinae

レトロウイルス科(英語:retrovirus)とは、RNAウイルス類の中で逆転写酵素を持つ種類の総称である。 単にレトロウイルスと呼ばれることも多い。 ちなみに医療従事者が単に「レトロ」という場合はほぼレトロウイルスではなく子宮後屈(retroflexio uteri)のことであることが多い。

概要

レトロというと古くさいというイメージが強く、古くから存在するウイルスと勘違いされることが多いが、この場合のレトロとは逆方向という意味である。 ウイルスが増殖するとき、そのほとんどが細胞内核酸のDNAからRNA核酸が複製されるのが、レトロウイルスでは逆にRNAからDNA核酸が複製される。

ウイルス核酸は一本鎖RNAの+鎖である。

レトロウイルス科のウイルスは直径約100nmの球状の形をしており、脂質エンベロープに覆われている。ウイルス粒子のコアには逆転写酵素と通常2組の同一なRNAゲノムを持つ。共通の遺伝子としては、プロモーター活性のある2つのLTR(long terminal repeat)と呼ばれる塩基配列の繰り返し領域に挟まれて、gag(構造タンパク質をコード)、pro(プロテアーゼをコード)、pol(逆転写酵素などをコード)、env(エンベロープのタンパク質をコード)を持っている。

生活環

ウイルスのエンベロープが細胞膜の受容体と結合することで、細胞内にRNA逆転写酵素が侵入する。

その後逆転写酵素が作用し、ウイルスRNAを鋳型にマイナス鎖DNAを合成する。そして合成されたマイナス鎖DNAを鋳型にプラス鎖DNAが合成され、一本鎖RNAが二本鎖DNAに変換される。

その後二本鎖DNAは宿主細胞のDNAに組み込まれ、プロウイルスと呼ばれる状態になる。プロウイルスは恒常的に発現している状態となっており、ウイルスRNAやメッセンジャーRNAが次々と合成されていく。メッセンジャーRNAはウイルス蛋白を合成させ、完成したウイルスは宿主細胞から発芽していく。

このレトロウイルスは近現代において「天然のナノマシン」として、様々な遺伝子治療や遺伝子研究に利用されている。

分類

レトロウイルス科は以下の亜科に分けられる。

スプマウイルス亜科

細胞を培養すると泡状 (spuma) の細胞変性効果が見られることから名づけられたウイルス。病原性は不明。

レンチウイルス亜科

発病までの進行が「ゆっくり (lente,lentus)」 であることを意味するウイルス。 1981年にエイズAIDS)の病名で広く知られるようになった疾患病原であるHIVはその代表であり、感染から発病までの潜伏期間は10年あまりになることが多い。                

オンコウイルス亜科

オルソレトロウイルス亜科

ガンマレトロウイルス属にはマウス白血病ウイルス、猫白血病ウイルス、細網内皮症ウイルスがある。 XMRV (Xenotropic murine leukemia virus-related virus)は前立腺がん慢性疲労症候群との関連が示唆されたが、後に人の疾病との関連は否定された[1]

関連

B型肝炎ウイルス (HBV: hepatitis B virus) はDNA→RNA→DNAと逆転写を経て複製するためレトロイドともよばれ、HIVの治療薬でもある逆転写酵素阻害薬の一部が効果を示す(エンテカビルアデフォビルラミブジンは日本でも保険適応がある)。

関連項目

参考文献