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無針注射器はその名の通り[[注射針]]のない[[注射器]]で、[[薬液]]を高圧で発射し、[[薬液]]が[[生体]]の[[経皮]]などを貫通することで[[注射]]を行う[[注射器]]のことである。大雑把に言えば、一般的な[[注射器]]の[[注射針]]よりも細い穴から、バネや油圧などの力で[[薬液]]を一気に噴射することで、[[薬液]]自体を針のようにとがらせて[[生体]]に撃ち込む水鉄砲である。この原理と代表的な製品の形状から[[鉄砲注射]]などとも呼ばれる。 | |||
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*:一般的な[[注射器]]では、[[注射針]]だけを交換し[[注射筒]]を交換しない場合に、前の[[患者]]からの[[病原体]]の逆流による[[感染症]]が僅かながら懸念される。 | *:一般的な[[注射器]]では、[[注射針]]だけを交換し[[注射筒]]を交換しない場合に、前の[[患者]]からの[[病原体]]の逆流による[[感染症]]が僅かながら懸念される。 | ||
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無針注射器の利点は理想論であり、とくに[[感染症]]への[[予防]]効果は期待外れで、1日に1回程度の[[消毒]]しか行われず無針注射器の噴射口が[[不衛生]]なまま使い続けられ、そこから[[ウイルス]]などに[[感染]]する事件が多発した<ref>{{cite web|author=伊藤精介|url=http://ci.nii.ac.jp/naid/40001715544|title=接種 かくしてC型肝炎は日本人に蔓延した!|publisher=[[週刊ポスト]]([[小学館]])|date=1998-12-11|accessdate=2014-06-16|archiveurl=http://web.archive.org/web/19991007021045/http://www.nipponroche.co.jp/tokyokanzou/108/a.html|archivedate=1999-10-07}}</ref>。これは技術的な問題というよりも、販売業者が「[[消毒]]不要」などとうたい販売したことによる運用上の問題という側面が大きい。 | |||
また、無針注射器は1970年代の日本において小学校および中学校の[[予防接種]]で用いられたが、一般的な[[注射]]の手作業と異なり、力加減を制御できないため、[[皮下注射]]のはずが[[神経線維]] | また、無針注射器は1970年代の日本において小学校および中学校の[[予防接種]]で用いられたが、一般的な[[注射]]の手作業と異なり、力加減を制御できないため、[[皮下注射]]のはずが[[神経線維]]まで貫き損傷させる事故が少なからず発生したことから、1987年8月に[[厚生省]](現:[[厚生労働省]])の撤収勧告が出され、1994年に[[乳幼児]]および[[小児]]などへの廃止と使用が取りやめられた。 | ||
2011年10月には米国[[FDA]]も[[インフルエンザワクチン]]の[[投与]]に際し、[[滅菌]]されてない[[ハイジェッター]]を使わないよう勧告している<ref>[http://www.fda.gov/BiologicsBloodVaccines/Vaccines/QuestionsaboutVaccines/ucm276773.htm FDA PRODUCT SAFETY -Medical Device-]</ref>。 | |||
こういった事情はメーカーも理解しており、現在は[[糖尿病]]の[[インスリン]]や[[歯科]]の[[麻酔]]など向けに、小型かつ弱めで[[皮下]]程度までしか届かないことで安全性を高めた新製品を出している。このような新製品でも1回使用ごとに[[洗浄]]、[[消毒]]は必須である。 | |||
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2019年3月5日 (火) 21:41時点における最新版
無針注射器(読み:むしんちゅうしゃき、英語:jet injector)とは、注射針のない注射器のことである。
世界初とされる製品名から通称「ハイジェッター」とも呼ばれる。かつてあらゆる家庭用ゲーム機が総じて「ファミコン」と呼ばれた現象のようなものである。
概要[編集 | ソースを編集]
無針注射器はその名の通り注射針のない注射器で、薬液を高圧で発射し、薬液が生体の経皮などを貫通することで注射を行う注射器のことである。大雑把に言えば、一般的な注射器の注射針よりも細い穴から、バネや油圧などの力で薬液を一気に噴射することで、薬液自体を針のようにとがらせて生体に撃ち込む水鉄砲である。この原理と代表的な製品の形状から鉄砲注射などとも呼ばれる。
利点[編集 | ソースを編集]
注射針を使用しないので以下のような利点がある。
実際[編集 | ソースを編集]
無針注射器の利点は理想論であり、とくに感染症への予防効果は期待外れで、1日に1回程度の消毒しか行われず無針注射器の噴射口が不衛生なまま使い続けられ、そこからウイルスなどに感染する事件が多発した[1]。これは技術的な問題というよりも、販売業者が「消毒不要」などとうたい販売したことによる運用上の問題という側面が大きい。
また、無針注射器は1970年代の日本において小学校および中学校の予防接種で用いられたが、一般的な注射の手作業と異なり、力加減を制御できないため、皮下注射のはずが神経線維まで貫き損傷させる事故が少なからず発生したことから、1987年8月に厚生省(現:厚生労働省)の撤収勧告が出され、1994年に乳幼児および小児などへの廃止と使用が取りやめられた。
2011年10月には米国FDAもインフルエンザワクチンの投与に際し、滅菌されてないハイジェッターを使わないよう勧告している[2]。
こういった事情はメーカーも理解しており、現在は糖尿病のインスリンや歯科の麻酔など向けに、小型かつ弱めで皮下程度までしか届かないことで安全性を高めた新製品を出している。このような新製品でも1回使用ごとに洗浄、消毒は必須である。
関連項目[編集 | ソースを編集]
参考文献[編集 | ソースを編集]
- ↑ 伊藤精介 (1998年12月11日). “接種 かくしてC型肝炎は日本人に蔓延した!”. 週刊ポスト(小学館). 1999年10月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月16日閲覧。
- ↑ FDA PRODUCT SAFETY -Medical Device-