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==概要==
==概要==
抗原とは、生体内に入ると生体が異物と認識して抗体を作る原因となる物質のことである。
抗原とは、[[生体]]内に入ると[[生体]]が異物と認識して[[抗体]]を作る原因となる[[物質]]のことである。
多くの場合、抗原は身体にとって異物または毒性である。
多くの場合、抗原は[[身体]]にとって[[異物]]または[[毒性]]である。


一度抗体ができると、次に侵入した同じ原因物質と特異的に反応する。異種のたんぱく質や多糖類・毒素・微生物などが抗原となりうる。
いったん生体内に[[抗体]]ができると長期間存在しており、次に同じ原因物質が侵入すると特異的に反応する。これを[[抗原抗体反応]]という。
 
[[細菌]][[ウイルス]]などの外来[[病原体]]や人為的な注射などで体内に入る[[タンパク質]]などが抗原となる。


自分の体を構成している成分が抗原となって免疫反応が起きることを[[自己免疫疾患]]という。
自分の体を構成している成分が抗原となって免疫反応が起きることを[[自己免疫疾患]]という。


また、抗原に過剰に反応してしまうことを[[アレルギー]]という。
また、抗原に過剰に反応してしまうことを[[アレルギー]]という。この[[アレルギー反応]]を引き起こす抗原は[[アレルゲン]]と呼ばれる。
[[アレルギー反応]]を引き起こす抗原を特に[[アレルゲン]]と呼ぶ。


抗原に対して有効な反応性を持った[[抗体]]を産生するためには多くの場合[[T細胞]]の関与が必要であるが、[[多糖類]]などのように抗体産生に[[T細胞]]を必要としない抗原 ([[胸腺非依存性抗原]]) もある。
抗原に対して有効な反応性を持った[[抗体]]を産生するためには多くの場合[[T細胞]]の関与が必要であるが、[[多糖類]]などのように抗体産生に[[T細胞]]を必要としない抗原 ([[胸腺非依存性抗原]]) もある。


==語源==
==語源==
1903年にラディスラス・ドイチュ(1874-1939)が抗原は抗体の生産を引き起こすことを発見した。
1903年に[[ラディスラス・ドイチュ]](1874-1939)が抗原は[[抗体]]の生産を引き起こすことを発見した。
抗体を作る切っ掛けであり、抗体と反応するもの、という意味の語「antisomatogen」を縮めて「antigen」と命名した。
抗体を作る切っ掛けであり、抗体と反応するもの、という意味の語「antisomatogen」を縮めて「antigen」と命名した。
==抗原の条件==
抗原となるためにはいくつかの条件がある。
===水溶性であること===
生体細胞は「異物らしきもの」を発見すると[[抗体]]を作る必要があるか(抗原か)の判断を行う。
その際の「異物らしきもの」の構造解析を行うには水に溶けていることが条件となるため、抗原は[[水溶性]]でなければならない。
===分子量が大きいこと===
[[抗体]]は抗原と結合することで[[解毒作用]]など発揮するが、抗原があまりに小さいと結合できない。
[[抗体]]が抗原に結合する部分を[[抗原決定基]]というが、その1つの[[分子量]]は平均して約700以上であり、この[[抗体決定基]]が[[分子]]中に複数個あり分子量の総数にして約6000以上あることが抗原の条件となる。あまりに異物の[[分子]]が小さいと[[抗体]]が結合できないため見過ごされる。
===複雑であること===
[[デンプン]]や[[ポリエチレン]]は[[分子量]]が非常に大きいが、その[[分子構造]]は極めて単純なものの繰り返しであるため抗原にはならない。
===異種的であること===
[[タンパク質]]は極めて複雑な構造で、かつ[[分子量]]も大きいが、自分自身([[生体]])を構成するもの([[同種タンパク質]])は抗原にならない。
これに対して[[異種タンパク質]]は抗原になりやすい。
[[母親]]の[[母乳]]を[[注射]]しても大丈夫だが、どこぞの[[牛]]の[[牛乳]]を[[注射]]すると大変なことになる。
==生物学的な分類==
===自己抗原===
[[自己抗原]]とは、[[生体]]内で抗原を現す[[物質]]のことである。
ただし、正常な状態では[[自己抗原]]の発現は抑制されており、無視される。
これを[[免疫寛容]]([[トレランス]])という。
[[がん]]に[[免疫]]が働かないのはこの機構により[[自己抗原]]と判別されるためである。
なんらかの原因で[[免疫寛容]]が破綻すると[[自己免疫疾患]]と呼ばれる様々な[[疾患]]が現れて大変なことになる。
===同種抗原===
[[同種抗原]]とは、同種の[[動物]]の個体間に[[抗原性]]を現す[[物質]]のことである。
[[血液型]]を決めている[[血液型物質]]や[[組織適合性抗原]]などがこれに相当する。
===異種抗原===
[[異種抗原]]とは、異種動物の[[高分子]]な生体物質のことである。
[[牛肉]]などは[[消化分解]]によって[[抗原性]]も失われるのでほぼ問題ない。
ただし、非常に稀に[[遅延型食肉アレルギー]]を引き起こす場合もあるのではないかという[[仮説]]もある。
一方で、[[牛乳]]などは[[分解]]されずに[[吸収]]されるため[[アレルギー]]を引き起こしやすい。
[[動物]]から[[分離]]した[[タンパク質]]を[[血管]]に[[注射]]すると[[抗原性]]を発揮する。
[[血清病]]などが有名である。
===異好抗原===
[[異好抗原]]とは、[[フォルスマン抗原]]のように広く動物細胞に分布し、[[臓器]]の[[特異性]]と無関係に[[抗原性]]を現す[[物質]]のことである。
その本体は[[脂質]]と[[多糖類]]の複合体である。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[アジュバント]]
*[[アジュバント]]
* [[エピトープ]]
*[[エピトープ]]
* [[ワクチン]]
*[[ワクチン]]
 
*[[抗原決定基]]
*[[抗原決定基]]
*[[抗原抗体反応]]
*[[抗原抗体反応]]

2020年9月10日 (木) 00:36時点における最新版

抗原(読み:こうげん、: antigen 、略号Ag)とは、生体内に入ると生体が異物と認識して抗体を作る(免疫反応を引き起こす)原因となる物質のことである。

概要[編集 | ソースを編集]

抗原とは、生体内に入ると生体が異物と認識して抗体を作る原因となる物質のことである。 多くの場合、抗原は身体にとって異物または毒性である。

いったん生体内に抗体ができると長期間存在しており、次に同じ原因物質が侵入すると特異的に反応する。これを抗原抗体反応という。

自分の体を構成している成分が抗原となって免疫反応が起きることを自己免疫疾患という。

また、抗原に過剰に反応してしまうことをアレルギーという。このアレルギー反応を引き起こす抗原はアレルゲンと呼ばれる。

抗原に対して有効な反応性を持った抗体を産生するためには多くの場合T細胞の関与が必要であるが、多糖類などのように抗体産生にT細胞を必要としない抗原 (胸腺非依存性抗原) もある。

語源[編集 | ソースを編集]

1903年にラディスラス・ドイチュ(1874-1939)が抗原は抗体の生産を引き起こすことを発見した。 抗体を作る切っ掛けであり、抗体と反応するもの、という意味の語「antisomatogen」を縮めて「antigen」と命名した。

抗原の条件[編集 | ソースを編集]

抗原となるためにはいくつかの条件がある。

水溶性であること[編集 | ソースを編集]

生体細胞は「異物らしきもの」を発見すると抗体を作る必要があるか(抗原か)の判断を行う。 その際の「異物らしきもの」の構造解析を行うには水に溶けていることが条件となるため、抗原は水溶性でなければならない。

分子量が大きいこと[編集 | ソースを編集]

抗体は抗原と結合することで解毒作用など発揮するが、抗原があまりに小さいと結合できない。 抗体が抗原に結合する部分を抗原決定基というが、その1つの分子量は平均して約700以上であり、この抗体決定基分子中に複数個あり分子量の総数にして約6000以上あることが抗原の条件となる。あまりに異物の分子が小さいと抗体が結合できないため見過ごされる。

複雑であること[編集 | ソースを編集]

デンプンポリエチレン分子量が非常に大きいが、その分子構造は極めて単純なものの繰り返しであるため抗原にはならない。

異種的であること[編集 | ソースを編集]

タンパク質は極めて複雑な構造で、かつ分子量も大きいが、自分自身(生体)を構成するもの(同種タンパク質)は抗原にならない。 これに対して異種タンパク質は抗原になりやすい。

母親母乳注射しても大丈夫だが、どこぞの牛乳注射すると大変なことになる。

生物学的な分類[編集 | ソースを編集]

自己抗原[編集 | ソースを編集]

自己抗原とは、生体内で抗原を現す物質のことである。

ただし、正常な状態では自己抗原の発現は抑制されており、無視される。 これを免疫寛容トレランス)という。 がん免疫が働かないのはこの機構により自己抗原と判別されるためである。

なんらかの原因で免疫寛容が破綻すると自己免疫疾患と呼ばれる様々な疾患が現れて大変なことになる。

同種抗原[編集 | ソースを編集]

同種抗原とは、同種の動物の個体間に抗原性を現す物質のことである。 血液型を決めている血液型物質組織適合性抗原などがこれに相当する。

異種抗原[編集 | ソースを編集]

異種抗原とは、異種動物の高分子な生体物質のことである。

牛肉などは消化分解によって抗原性も失われるのでほぼ問題ない。 ただし、非常に稀に遅延型食肉アレルギーを引き起こす場合もあるのではないかという仮説もある。

一方で、牛乳などは分解されずに吸収されるためアレルギーを引き起こしやすい。 動物から分離したタンパク質血管注射すると抗原性を発揮する。 血清病などが有名である。

異好抗原[編集 | ソースを編集]

異好抗原とは、フォルスマン抗原のように広く動物細胞に分布し、臓器特異性と無関係に抗原性を現す物質のことである。 その本体は脂質多糖類の複合体である。

関連項目[編集 | ソースを編集]

参考文献[編集 | ソースを編集]