「コラーゲン」の版間の差分
(→関節痛) |
|||
(2人の利用者による、間の5版が非表示) | |||
3行目: | 3行目: | ||
==概要== | ==概要== | ||
体内に存在しているコラーゲンの総量は、[[ヒト]]では、全[[タンパク質]]のほぼ30%を占める程多い。 | 体内に存在しているコラーゲンの総量は、[[ヒト]]では、全[[タンパク質]]のほぼ30%を占める程多い。 | ||
==主な用途== | |||
<ref>宮田輝夫、A. L. Rubin, K. H. Stenzel., 人工臓器資料集成(越川昭三、桜井靖久、中林宣男), p.90, ライフ・サイエンス・センター(1976)</ref> | |||
コラーゲンの医用材料への応用は、最近になり非常に注目されている。 | |||
まず、[[抗原性]]が他の[[タンパク質]]に比べて非常に低いことがあげられる。コラーゲンの抗原決定部位は主に[[テロペプチド]]中に存在するが、酵素可溶性コラーゲンではこのテロペプチドが除去されているために、抗原性がほとんど問題にならない。また、酸可溶性コラーゲンでも[[繊維]]や[[膜]]などの加工時に[[グルタルアルデヒド]]や[[γ線]]で[[架橋結合]]を導入すると、その抗原性が著しく減少することが知られている。 | |||
また、コラーゲンは各種[[細胞]]の[[基質]]の役割を果たしているので、医用材料として[[生体]]に応用した際、[[組織]]との親和性がよく、[[細胞]]の[[生長]]の足場となる。したがって、[[合成高分子]]に比べて生体とのなじみが非常によい。 | |||
さらに、[[化学修飾]]することによりコラーゲンの性質が調節できることも利点としてあげられる。例えば、[[架橋結合]]の導入により[[生体]]内でのコラーゲンの消化分解速度を遅くする。コラーゲンを[[メチル化]]し[[血栓性]]にする。あるいは、[[スクシニル化]]し[[抗血栓性]]にするなどである。 | |||
{|class="wikitable" | |||
|+ | |||
! 形状 | |||
! 用途 | |||
|- | |||
| 溶液 | |||
| 血漿増補液、コーティング | |||
|- | |||
| ゲル | |||
| 代用硝子体、創傷カバー材 | |||
|- | |||
| 粉末 | |||
| 止血剤、drug delivery | |||
|- | |||
| 紡糸繊維 | |||
| 縫合糸、人工血管、人工皮膚、人工腱 | |||
|- | |||
| フィルム | |||
| 角膜、drug delivery | |||
|- | |||
| 膜 | |||
| 血液透析膜、人工硬膜、人工鼓膜、癒着防止膜 | |||
|- | |||
| チューブ | |||
| 人工血管、人工胆管、チューブ状器官 | |||
|- | |||
| hollow fiber | |||
| 血液透析膜、人工肺膜 | |||
|- | |||
| スポンジ | |||
| 創傷カバー材、止血剤 | |||
|} | |||
==美肌効果== | ==美肌効果== | ||
8行目: | 51行目: | ||
世間一般で謳われている「美肌効果」は誰もその効果を担保しておらず、[[医学]]的な根拠に貧しく[[プラシーボ効]]果以上の効果は見込めない。 | 世間一般で謳われている「美肌効果」は誰もその効果を担保しておらず、[[医学]]的な根拠に貧しく[[プラシーボ効]]果以上の効果は見込めない。 | ||
==関節痛== | |||
[[ヒト]]の[[皮膚組織]]にコラーゲンが含まれており[[老化現象]]により年齢とともに失われるが、それをコラーゲンの[[経口摂取]]で補うとうたう[[健康食品]]が後を絶たない。 | [[ヒト]]の[[皮膚組織]]にコラーゲンが含まれており[[老化現象]]により年齢とともに失われるが、それをコラーゲンの[[経口摂取]]で補うとうたう[[健康食品]]が後を絶たない。 | ||
コラーゲンは[[タンパク質]]であり[[経口摂取]]してもすぐさま[[胃]]([[胃液]]の[[ペプシン]])で[[分解]]されるため、そのまま分解されずに[[関節]]まで届くとする[[医学]]的な根拠に貧しく、[[プラシーボ効果]]以上の効果は見込めないものと思われる。たとえるなら「[[髪の毛]]を食べれば[[ハゲ]] | コラーゲンは[[タンパク質]]であり[[経口摂取]]してもすぐさま[[胃]]([[胃液]]の[[ペプシン]])で[[分解]]されるため、そのまま分解されずに[[関節]]まで届くとする[[医学]]的な根拠に貧しく、[[プラシーボ効果]]以上の効果は見込めないものと思われる。たとえるなら「[[髪の毛]]を食べれば[[脱毛症]](通称:[[ハゲ]])が治る」くらい無茶な話であり、かなり胡散臭い製品も多い育毛剤業界ですらそんなことはまず言わないくらい突飛な話である。 | ||
==その他== | |||
「美肌効果」や「[[アンチエイジング]]」の効果があるという偽りの広告が絶える事が無い事から、信じている消費者が多い。 | 「美肌効果」や「[[アンチエイジング]]」の効果があるという偽りの広告が絶える事が無い事から、信じている消費者が多い。 | ||
==関連項目== | ==関連項目== | ||
*[[タンパク質]] | *[[タンパク質]] | ||
*[[コエンザイム]] | |||
==参考文献== | ==参考文献== |
2015年1月15日 (木) 01:14時点における最新版
コラーゲン(英語: Collagen)とは、真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質のひとつで、多細胞動物の細胞外基質(細胞外マトリクス)の主成分である。
概要[編集 | ソースを編集]
体内に存在しているコラーゲンの総量は、ヒトでは、全タンパク質のほぼ30%を占める程多い。
主な用途[編集 | ソースを編集]
[1] コラーゲンの医用材料への応用は、最近になり非常に注目されている。
まず、抗原性が他のタンパク質に比べて非常に低いことがあげられる。コラーゲンの抗原決定部位は主にテロペプチド中に存在するが、酵素可溶性コラーゲンではこのテロペプチドが除去されているために、抗原性がほとんど問題にならない。また、酸可溶性コラーゲンでも繊維や膜などの加工時にグルタルアルデヒドやγ線で架橋結合を導入すると、その抗原性が著しく減少することが知られている。
また、コラーゲンは各種細胞の基質の役割を果たしているので、医用材料として生体に応用した際、組織との親和性がよく、細胞の生長の足場となる。したがって、合成高分子に比べて生体とのなじみが非常によい。
さらに、化学修飾することによりコラーゲンの性質が調節できることも利点としてあげられる。例えば、架橋結合の導入により生体内でのコラーゲンの消化分解速度を遅くする。コラーゲンをメチル化し血栓性にする。あるいは、スクシニル化し抗血栓性にするなどである。
形状 | 用途 |
---|---|
溶液 | 血漿増補液、コーティング |
ゲル | 代用硝子体、創傷カバー材 |
粉末 | 止血剤、drug delivery |
紡糸繊維 | 縫合糸、人工血管、人工皮膚、人工腱 |
フィルム | 角膜、drug delivery |
膜 | 血液透析膜、人工硬膜、人工鼓膜、癒着防止膜 |
チューブ | 人工血管、人工胆管、チューブ状器官 |
hollow fiber | 血液透析膜、人工肺膜 |
スポンジ | 創傷カバー材、止血剤 |
美肌効果[編集 | ソースを編集]
コラーゲンは分子が大きいため皮膚表面に塗っても効果はない。 世間一般で謳われている「美肌効果」は誰もその効果を担保しておらず、医学的な根拠に貧しくプラシーボ効果以上の効果は見込めない。
関節痛[編集 | ソースを編集]
ヒトの皮膚組織にコラーゲンが含まれており老化現象により年齢とともに失われるが、それをコラーゲンの経口摂取で補うとうたう健康食品が後を絶たない。
コラーゲンはタンパク質であり経口摂取してもすぐさま胃(胃液のペプシン)で分解されるため、そのまま分解されずに関節まで届くとする医学的な根拠に貧しく、プラシーボ効果以上の効果は見込めないものと思われる。たとえるなら「髪の毛を食べれば脱毛症(通称:ハゲ)が治る」くらい無茶な話であり、かなり胡散臭い製品も多い育毛剤業界ですらそんなことはまず言わないくらい突飛な話である。
その他[編集 | ソースを編集]
「美肌効果」や「アンチエイジング」の効果があるという偽りの広告が絶える事が無い事から、信じている消費者が多い。
関連項目[編集 | ソースを編集]
参考文献[編集 | ソースを編集]
- ↑ 宮田輝夫、A. L. Rubin, K. H. Stenzel., 人工臓器資料集成(越川昭三、桜井靖久、中林宣男), p.90, ライフ・サイエンス・センター(1976)